世界の未来を考えるためのきっかけに 落合陽一「2030年の世界地図帳」 【本・感想】

今回は落合陽一さんの「2030年の世界地図帳」をご紹介します。

私は落合さんがnews zero でレギュラーとしてご出演されているのを見て、わかりやすいコメントと独自の筋の通ったお考えが好きでずっとファンでした。
なのでこの本も一度読んでみたいと思っていたのですが、如何せん本自体が大きくて渋っていました。

ですが今回読んでみてとても良かったので、みなさんにおすすめしたいと思います!

こんな人におすすめ

・データから世界の今までとこれからを考えたい人
・SDGsについて知りたい、考えたい人

内容・構成

この本ではSDGsを中心に、2030年の世界について様々な観点で考えていくという内容になっています。

すべてで4章あり、それぞれ

第1章 2030年の未来と4つのデジタル・イデオロギー
第2章 「貧困」「構成」は解決できるのか?
第3章 地球と人間の関係が変わる時代の「環境」問題
第4章 SDGsとヨーロッパの時代

となっています。

各章では最初に地図やグラフがたくさんまとめられており、その後それらのデータをもとに解説に入っていきます。そして最後に落合さんと専門家の方の対談が書かれています。
専門家の方は池上彰さんをはじめとした方との対談が、わかりやすい内容でまとめられています。

時間のない方はそれぞれの章の地図やグラフを見るだけでも対話的な思考を促すための良いツールになるでしょう、と落合さんもこの本の中で書かれており、豊富なデータがそろっています。

SDGsとは

この本の中心として扱われるSDGsとは何かご存じでしょうか。
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略です。

Sutenableとは「持続可能性」と訳せるので、SDGsは「持続可能な開発目標」という意味になります。
これは持続可能な世界の実現のために定められた2030年までの世界共通の目標のことです。

昔はどんどん開発を進めて発展することが良いこととされてきました。
ですがその弊害として環境破壊や、貧富の差・格差が大きくなってしまうなど様々な問題が発生しています。

このままでは世界を維持していくことが難しくなってきています。
そのためSDGsを考えていく必要があるのです。

SDGsは17個の項目があり、「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」など様々なテーマを目標にしています。

SDGsは2010年の国連サミットで採択され、2030年の達成を目標としています。
SDGsのもとになったのは、2000年から2015年にかけて進められたMDGs(ミレニアム開発目標)というものです。
MDGsは8つの目標と21のターゲットが設定され推進されましたが、ほとんどの目標が未達成のまま終わってしまっています。

これらの反省を活かしつつ、MDGsの理念と方法論を継承する枠組みとして作られたのがSDGsです。

SDGsの特徴は「目標が細かく数値化されている」「対象が先進国と発展途上国の両方」「グローバル企業が策定に参加している」という3点です。
MDGsでは対象は発展途上国のみ、国連やNGOなどの公的機関によって策定されていたので、MDGsでの反省を活かした内容になっているということでしょう。

データを見ることでわかる世界の事実

この本の魅力の一つは過去から現在、そして未来の予測データがたくさんまとめられており、それをもとに落合さんが解説をしていくところです。
データを見ると思い込みと事実との乖離を感じるところがたくさんありました。

例えばGDPですが現在日本はアメリカと中国に次いで第3位にいます。
ですが予測では2030年にはインドに抜かれて第4位に、そして2050年にはインドネシアに抜かれて第5位になるそうです。
インドはIT関係が強く経済成長しているという風には知っていましたが、その勢いはあと十数年で日本を抜くものだとは思っていませんでした。
またインドネシアに関してはノーマークだったので驚きです。

もうひとつの例としては世界のハイテク都市ランキングで1位はサンフランシスコ、2位はニューヨークなのですが、日本は東京が12に入っているだけであとは軒並み他国です。
5位にソウル、6位に台北、9位にトロントが入っており、私のイメージではもう少し東京は上なのではないかと思っていたのですが、他国に負けてしまっているところがかなりあるなと実感しました。


本が大きい分これらのデータも見やすくて、視覚的にしっかり入ってくるのがとても良かったです。

リバースイノベーション

もうひとつとても面白かったのはリバースイノベーションについてです。

アフリカなどは先進国でいうところの「近代化」を経由せず現代に至っています。
そのため先進国では生まれないような独特のイノベーション(リバースイノベーション)が生まれます。

この本で代表例として紹介されているのは、ケニアで普及している電子マネーの「Mペサ」です。

発展途上国では固定電話よりも携帯電話が普及する傾向が強く、ケニアも同じ傾向にあります。

ケニアではプリペイドカード式のSIMカードを買って、家族共有の携帯電話に自分のSIMカードをセットして、チャージしておいた時間分だけ通話や通信を行っていました。

そこにユーザー間で通話時間の残高をやり取りできるサービスが登場し、次第に通信時間を現金の代わりに個人間の商品売買等に使い始めます。

通信会社がこれに目を付け、通信時間を換金できる仕組みを整えます。
こうして生まれた現金と完全な互換性のある電子マネー「Mペサ」がケニアで爆発的な人気となったのです。
これは日本や一部の先進国ではなかなか浸透しきらない電子マネーがアフリカの地で爆発的に広がるという面白い例です。

理由としてはアフリカでは身近に銀行が無かったり、もともと物々交換が盛んにおこなわれているなど、先進国とは異なる環境が大きく関係している


このような先進国では見逃されていたようなことが、発展途上国で新たな価値として見いだされるのはとても面白いと思いました。

まとめ

私がすごいと思ったのはこの本は2019年に書かれたものなのですが、リモートワークが増えていくなど実際に今起こっていることが予測されて書かれているんです。
ここは落合さんの将来を見通す目が優れているんだなと思いました。

またこの本を通して、思い込みやイメージに惑わされず、データを正しく読み取って考えることが重要だと思いました。

SDGsは世界のことだからと他人事にしないで、私たち一人ひとりが自分事として何ができるか考えていくことが大切なのではないでしょうか。