野口宇宙飛行士から学ぶ「宇宙フォト入門」

宇宙飛行士の野口聡一さんのYouTubeチャンネルで、写真好きにはたまらない動画が公開されました。
その名も「宇宙フォト入門」です。
いやもう題名みただけでわくわくしてしまいますよね。

ということで今回は、野口さんがご紹介されている国際宇宙ステーションでの写真撮影についてご紹介していきます。

野口さんこだわりの企画

野口宇宙飛行士はYouTubeチャンネルを解説しており、そこでは国際宇宙ステーションでの暮らしや実験など様々な宇宙ならではの動画を配信されています。

そして今回ご紹介する「野口宇宙飛行士の宇宙暮らし048 宇宙フォト入門」は2021年3月28日に公開された動画です。

内容は題名のままですが、国際宇宙ステーションでの写真撮影事情です。
野口さんが最初に「超こだわり企画」とおしゃられているので、野口さんカメラお好きなんですね。

ISO感度やピントなどのカメラの基本的な話から、使われているカメラやレンズなどの深い話までたっぷり時間をかけて解説されています。

国際宇宙ステーションで使われているカメラ

国際宇宙ステーションでは現在「Nikon D5」 が使われているそうです。
D5はNikonの一眼レフカメラの最上位モデルにあたるもので、プロの写真家の方が使うような機材です。
最近では後継機のD6が出てきたりしていますね。

Nikonも最近ではフルサイズミラーレスの販売もしていますが、安定感のある一眼レフカメラをチョイスしているのかもしれません。(Z7とかが発売される前に導入された可能性もありますが。)
つい最近Nikonの一眼レフの国内生産が終了してタイの工場に移管されましたが、今後もD5が使われるのかは気になるところですね。

昔はNikon以外にもHasselblad(ハッセルブラッド)やkodak(コダック)など様々なメーカーのカメラがあったそうですが、今はD5のみに統一されているとのこと。
これは交換部品、故障時の対応をしやすくするためです。

ちなみに国際宇宙ステーション内にあるD5の数はなんと16台、めちゃくちゃありますね。

被写体ごとの撮影方法

被写体ごとに撮影方法も詳しく紹介されていました。
撮影時にはプログラムモード(絞り値とシャッタースピードの両方をカメラが自動で合わせてくれるモード)を使うことはほとんどないそうです。

船内
モード:絞り優先
船内は暗くシャッタースピードが落ちるので、ISO感度を上げて撮影するそうです。
D5は常用ISO 102400と言われているくらいの超高性能なので、フラッシュなしできれいに撮れるんだとか。

地球
モード:シャッタースピード優先
地表は秒速8kmで動いているため、シャッタースピードがゆっくりだとぶれてしまいます。
そこでNIKKOR 800mmを使って、シャッタースピードを1/1000秒くらいに設定して撮影をするそうです。
フォーカスもマニュアルで行いますが、地球までの距離はいつでもほぼ400kmで変わらないので、一度地表にピントを合わせておけば大体のものはきれいに撮れるそうです。
こういうところは宇宙ステーションならではですね。


モード:マニュアル
月は太陽の光を反射しているので日中の地表と同じ明るさですが、周りの宇宙は暗いので露出オートだと宇宙の暗さに引っ張られて、月が白飛びしてクレーターなどの模様が写りません。
そのため露出をはじめ、すべてマニュアルで撮影しているそうです。

オーロラや星空
モード:マニュアル
ここら辺はとても暗いので、長時間
暗いので、シャッタースピードを30秒とか長く設定して撮影をしているそうです。

船内+地球の表面
モード:マニュアル
船内と地球の表面はかなり明るさに差があるため「exposure matching(室内外の露出を合わせる)」という方法を使用して撮影します。
まずは地球の明るさに設定を合わせます。いつも1/250, f8, ISO200で固定しているそうです。
この状態でフラッシュをたいて撮影することで船内の明るさを持ち上げて、地球も人物も同じくらいの明るさで撮影しているそうです。

レンズ

国際宇宙ステーション内にあるカメラはD5だけだとご紹介しましたが、レンズはたくさん種類があるようです。


「Nikkor 8mm Fish Eye」
完全マニュアルレンズで、絞り・フォーカスすべて手動で合わせる必要があります。
丸い地球が撮れる
非Ai、Ai、Ai-sの3種類があり動画で見る限りはどれを使っているのかはわかりませんが、1970年から1997年まで製造されていたもので、現在ではオールドレンズの括りになると思います。
現行の魚眼レンズと比べてもかなり特徴的な形とサイズをしていますよね。

「AF-S NIKKOR 800mm f/5.6E FL ED VR」
建物が撮れるレンズとして紹介されていて、かなり存在感のあるサイズ感になっています。
価格も100万円以上するレンズなので、そちらの面でも存在感がありますね。
こんな大きいレンズが付いていても片手で持てちゃうのが、見慣れていないので違和感がすごかったです。


「APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM」
気軽に撮れるレンズとして紹介されていたのが、SIGMA(シグマ)の望遠ズームレンズです。
地球では気軽に撮れるサイズでも焦点距離でもないんですが、そこはさすが宇宙って感じですよね。
最短撮影距離も50cmで、望遠ズームレンズ的には結構優秀な距離なのではないでしょうか。
こちらはオールドレンズではありませんが、SIGMAのラインナップからは無くなっていました。
(下のリンクはcannonのしかなかったのでそちらを貼っていますが、外観は同じです。)


「Noct Nikkor 58mm F1.2」
開放値f1.2と明るいレンズのため、夜景の撮影で使用されているそうです。
「Nocturne(夜想曲)」から名前を取ってきており、「Noct」というのは「夜」という意味です。
その名の通り夜景撮影を目的に作られたレンズのため、f値がf1.2とかなり明るくなっています。
野口さんも動画でおっしゃっていたように最近ではf0.95という車よりも高いレンズが発売されましたが、こちらはそれよりも1世代前のものですね。


「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」
広角ズームレンズなので、船内で仲間の宇宙飛行士を撮ったりするのに手軽に使えて便利だそうです。
f2.8で明るめな点も使いやすいそうです。

宇宙で写真を撮ってわかったポイント

動画の最後では野口さんが宇宙で写真を撮ってわかったこととして以下の3点を挙げられています。

  1. ピントがすべて
    取りたいものにフォーカスが合っていないと意味がない
  2. レンズは明るいのがいい
    レンズは取りたいものをどう表現するかで選ぶ
  3. カメラは感動を伝える道具だ!
    カメラは事実を伝えるものではない

写真家のようなまとめになっており、野口さんほんとうにカメラがお好きなんだなと思いました。

まとめ

星の写真を撮るという方はたくさんいらっしゃると思いますが、星がある方から地球の写真を撮るなんてことはほとんどの方ができないので、宇宙ステーションならではの貴重なお話ですよね。
野口さんのカメラへのこだわりや愛をかなり感じる動画でした。

カメラ好きや宇宙好きの方にはかなり面白いお話だと思いますので、ぜひ見てみてください。